本当ならばこの夏はオリンピックで湧いていたはずの東京。多くの人がイベント前のワクワク感を味わいながら、ときに交通の混雑を心配したり、日本の選手のコンディションに一喜一憂したり。ちょっと一杯飲みに…とふらりと入ったお店もオリジナルの〝オリンピックメニュー〟を展開していたりして、「乗っかるね〜」なんて心の中で思ったり、言い合ったり。日本中がふんわりと頭の片隅に思い描いていた2020年の夏は、そんな感じでしょうか。
コロナウィルスの感染者数はピーク時よりもかなり減ったとはいえ、日常を取り戻すのはまだまだ時間がかかりそう。いいえ、もしかしたら、今の状況がスタンダードになる可能性だってあるのかもしれません。この連載の第5回で書かせて頂いたように、今私たちは変化することを求められているようです。でももしかしたら、それは変化ではなく進化なのかも。

 

 さまざまなニュースを見ていると、どうやらこれからは上手にウィルスとつき合って行かなくてはならないみたい。結局のところ、手洗いとうがい、マスクを着用することを習慣化させることが一番の予防になるという情報を耳にしました。そうであるならば、社会情勢などの影響を強く受ける文化、そのひとつであるファッションは、この状況を色濃く反映するのではないかと思います。それはすでに現れていて、たとえば今は、マスクをつけているのが当たり前で、逆にマスクをつけていない人のほうが浮いて見えますよね。もはやマスクは生活必需品ですが、今後はファッションアイテムの一部にもなってきそう

 その証拠に、パリコレでもマスクありきのスタイルがちらほら。大注目ブランド、マリーン セルは、数シーズン前から汚染された空気から身を守るフランス発のスマートマスク〝R=PUR〟とコラボしマスクを発表していて、20202021年秋冬のランウェイでは、スパンコールに覆われたマスクを発表していました。このようにスタイリッシュさを感じるデザインのマスクはすでにハイブランドもファッションとして出しています

 

 そんなイセンスなマスクを身につけるにはまだ勇気と自身が必要そうだけれど、もう少し日常に落とし込んでみても医療用のマスクが不足していたということと、コロナ不況でファッションメーカーが苦戦しているということもあり、さまざまなアパレル関連企業がマスクの生産に乗り出していますユニクロのエアリズムマスクも予想通り、店頭分は即完売するなど話題を集めていますよね「布マスクには他者からの感染を防ぐ効果はまったく期待できない」という意見も聞いたりしますが、日本のブランド、スキンアウェアに代表されるように、抗菌加工をされている布を使っている上に、日本製で、オーガニックコットン、繰り返し洗って使えて、環境にも経済にも優しいサスティナブルという、お洒落感度の高い女子たちの大好きを詰め込んだマスクが続々と登場しています。そして何より、ニュアンスカラーが勢揃いしていて、感染防止というだけでなく、コーディネートをぐんと格上げしてくれるような柄や色のものも。こうなってくると、マスクありきのコーディネートが当たり前になりそう。やっぱりマスクはファッションアイテムの一つになってきています。

 

 こうやって書いている今、ふんわりと頭に浮かんだのは、10年前のK-POPアイドルたち。私が知っている限り、BIGBANGなどをはじめとした、韓国のファッショニスタたちはすでに黒とか千鳥格子とか、それこそスパンコールの生地のマスクをしていました。それがすごく新鮮で、私も日本でつけていた時期があったのですが、日本の街ではかなり浮いていたようで若干引かれた覚えがあります。けれど、今まさにマスクありきで考えるスタイリングが求められている、と実感しています。

 

  〝ピンチは進化のチャンス〟

 

 これまでの人類の歴史でも絶体絶命の危機というのはたくさんありました。どうやら環境の変化にさらりと乗れた者が生き残ってきたようです。さまざまな変化に対応できる人は強い。この状況になってそう思います。当たり前だけれど、諦めないでまずやってみることが大事だったりしそう。それはもちろん生活に直接関係がなさそうなファッションだって然り。「お洒落な服を着ても、マスクをしちゃえば台無し」そんな声も聞きます。けれど、そんな環境の中でも楽しみや喜びを見いだせる前向きな人でありたいし、そういう人ってなんだか気持ちがいい。どうせマスクをするから…とお洒落をすることを諦めたら、あとは転げ落ちるように美しさからは遠のいていくと思いませんか。ダイエットと同じで、多くの人が太るのは簡単だけれど、痩せるのは時間がかかるのと同じなのではと思います。

 

 マスクの種類がだんだん増えるとともに、骨格に似合うマスク、似合わないマスクも出てきています。ストレートタイプは立体感のあるデザインでハリのある生地でできたもののほうが美人に見えるし、ウェーブ体型はとろんとしたサテンの生地のものが可愛らしく見える。そしてナチュラル体型はリネン素材のもののほうがサマになる。マスクにも選択の幅が広がったからこそ、似合うマスクをつけてみるのはどうでしょう? それは、私たちがいつも楽しんでいるスタイリングの進化を意味していると思います。素敵な人はマスクをしたってお洒落!感染も防ぎつつも美しくいられる工夫をしてみませんか。そんな姿勢が明るい明日に繋がると信じています。

ストレート体型の私は、マスク着用したときに中央が尖るような立体感のあるものがしっくりきます。いつものメリハリのあるコーディネートとも相性がいいので、見つけるとついつい買ってしまいます。

 

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棚田朋子

神奈川県出身。愛称は〝ティナ〟

光文社CLASSY.やJJなどを中心にファッションや美容ページ企画などのライターとして活躍する傍ら、骨格診断アナリスト協会(ICBI)にて骨格診断のディプロマを取得。以降〝骨格診断アナリスト〟としても活動中。