私はファッションが大好きです。

 

Details of bright beautiful pastel tones dress collection in show room

 

洋服の楽しさは幼い頃から母に教わりました。

 

靴下と下着以外は母の手作り。 しかも大人と同じ生地を使い、 綺麗な刺繍を丁寧に縫われた洋服たち。 私のあとは親戚の女の子たちに争奪戦で、 子供ながらに誇らしく思いました。

 

そんな服を作りたくて、あの着心地を再現したくて、 洋服のデザイナーになりました。 

 

「丁寧に作られた服は、ずっと大切に受け継がれていく」

 

言葉では言い表せない大切なものを母からもらったと 思います。 子供ながらに感じていたことは、いまの私の「ものづくり」の 原点となっています。 

 

でも、そんな想いとは別に、若い頃の私は 人より多くの服を買い、失敗もたくさんしましたし、 サイズが合わなくなり泣く泣く手放したものも沢山あります。 かたや20年以上、クローゼットにいるお気に入りの子達もいます。 

 

Fashionable clothes in a boutique store in London

 

長年ファッションの世界で仕事をしていると、どこかの タイミングで原料の供給国の国情勢や縫製している工場の 労働環境、賃金の問題なと、普段は見えない景色が見えてきます。 人だけではなく、動物や土壌汚染、河川汚染などの環境問題にも 向き合う事があります。 

 

同時に 想像を超えるほどのセールでも売れ残った洋服の過剰在庫を 自社だけでなく、産業全体で嫌と言うほど目の当たりにします。

 

近年ではH&MやZARA、UNIQLOなとが着なくなった衣料の 自主回収をし、再生エネルギーや発展途上国へ送る取り組みを していますし、ハイブランドがエシカルやサスティナブルを ファッションそのものに変え、時代が移りつつあります。

 

そのほかのアパレルの取り組みはというと。。。 それらの商品は廃棄されると解っているのに、利益の追求が一番で、 在庫の処分については誰かが考えてくれるだろう、なんとか赤字に ならないよう処分せねば、と四苦八苦で、そもそもである適正な生産と 供給についてはやっと本格化し始めたばかりです。 

 

 

そこで、アパレル従事者として 自分に何かできることはないかと考えた時に二神先生が主催するICBの「骨格診断」に出会いました。

 

初めは、なるほどと納得する反面、 「そんな事をデザイナーが言い始めたら 服が売れなくなるかも・・・」と思った事もあります。

 

「ファッションを理論で置き換える」・・・もしかしたら、私は これまでの感性を重んじるデザイナーの定義とは正反対のことを 言っているかもしれません。 

 

でも、私の原点である「丁寧に作られた服は、ずっと大切に受け継がれていく」は、「丁寧に選ばれた服は、ずっと大切に着てもらえる」に 言い換えられると思ったのです。 

 

それが、ハイブランドであってもファストファッションで あっても変わらない。 感性的に好き!と思えるだけでなく、理論的にも納得した ものは、ワクワク感と安心感の両方を得ることができる。 それは、ファッション関係者だけでなく、誰にでも当てはまる ことだと確信に変わっていきました。 

 

そして 製品寿命が伸びれば消費サイクルが延び、エコに繋がります。 

洋服を大切に扱うようになり、モノを大切に扱う心が生まれます。 

 

お客様の骨格から理論的に似合うものを導き出し、 お客様のなりたいイメージに繋げることができる骨格診断は、 サスティナビリティの一環として役立つ事ができる のではないかと考えています。

それにパーソナルカラーなどが加われば、買い物での 失敗は減りますし、無駄な消費も抑えられます。 

 

売れる洋服の数が減ったら、困るのは自分たちじゃない? という声が聞こえてきそうですが笑


そうです。
困ります。 

 

 

こんなに沢山ある日本のアパレルは淘汰されていくでしょうし、 そのなかで日本に残っている素晴らしい繊維産業を 守らなければなりません。 だからこそ、大切に丁寧に作ったものを、 長く着ていただけるものを 私たちは作り続ける必要があると考えています。 

 

この感覚はこれからの時代に非常に大切な意味があると 思えるのです。100年後の世界が、今より良くなるために。 

 

日本は生地だけでなく、原料となる綿や麻、天然繊維のほとんどを 輸入に頼っています。 その原料が良い品質であればあるほど、インドやアフリカなどの 途上国で生産されたものを直接、または第三国を挟んで輸入して います。 

 

先進国のアメリカでの栽培は機械化が進んでいます。 途上国は豊かな土と風土を活かして上質の綿をつくり、 人の手で作られているケースが多くあります。 丁寧に育てられたものは本当に素晴らしいのですが、 働いているかた達が大人とは限らないのが現実です。 

 

 

すべての国の羊たちが幸せとは限りません。 人間の都合で生まれ持った体の一部を操作されたり、 毛の質が悪いとされた羊たちの行方は言葉にするのも 躊躇します。 

 

そして、私が今お伝えしている事は、世界で起きている事の ほんの一部に過ぎないのです。 

 

例えば今日、着ている洋服がコットンのシャツだとします。 誰が縫って
誰が生地を作り、誰が綿花を摘み 、誰が
畑を耕しているか 想像してみて欲しいのです。

 

 

La récolte du coton

 

ウールのコートを着ているとします。 誰が縫って、誰が羊を育て、羊が幸せな環境であるかどうか。

考えてみてほしいのです。 

 

衣食住の一番最初にくる世界中の「衣」を満たすために 世界で起きている現実をふと感じていただき、 今日、身につけているものに感謝して慈しんでいただけたら 大変嬉しく思います。 

 

 

2018/12/20

ファションデザイナー 吉鶴 智香