―高貴であり、高尚であり、高潔―

格式高いそれはいつから“お葬式にお供えするもの”というイメージがついたのでしょう。

 

先日、定期的に伺っているフラワーアレンジメントの教室で“重陽の節句”をお祝いしました。平安時代初めに中国から伝わったとされるこの行事は、菊の節句とも呼ばれ、家族の無病息災、子孫繁栄、不老長寿を願い、祝いの宴を開いたことが起源だそう。そんなお話を教えて頂きながらフローリストであり、私のお花の師である先生が菊を使ってデモンストレーションをしてくださいました。出来上がったブーケの素晴らしいこと。そこには“菊=仏花“という方程式は存在しません。それ一本でも存在感たっぷりの菊科のダリヤ、愛らしい秋明菊、直径5mm程の淡い紫色の小さな花たちをたんまりと冠したフジバカマ、華奢な茎にアンバランスなほどの花びらを携えたコスモス。それぞれが寄り添いながらも個性を発揮する花束には奥行きがあり、情緒がありました。

 

 知らなかったことを目の当たりにすると、これまでの価値観がガラリと変わったりするものです。それは生活を豊かにしてくれるだけでなく、時に人生を変えるくらいのものだったりも。私は、骨格診断というツールもみなさんの日常がより豊かになるきっかけになると思っています。何を着ていいかわからない方には、ファッションを簡単に楽しめるような道標となり、自分自身をアップデートしたい方にはずらりと仕分けした素材やシルエット、そしてそれらの組み合わせを通して新しいテクニックをご提案できます。自分に寄り添うアイテムについて学ぶ時間は、楽しく有意義な時間になるでしょう。ただ、どちらの場合も真面目な方であればあるほどルールに縛られがちです。ストレートタイプは直線的でかっちりしたもの、ウエーブタイプは曲線的で繊細な作りのもの、ナチュラルタイプは大きめでユニセックスなデザイン…。それは間違いなくスタイルアップの指針になりますが、ルールに忠実に構成した着こなしはどこか味気ないもので、各骨格タイプのネガティブとされている部分は隠れているものの、なぜか心は満たされないということになりがち。だからこそ、まずは好きなものを軸に。あのブーケが魅力的なのは、それぞれの特徴を生かしながらも見事に調和されていたからです。菊はロマンティックなブーケには決してならないし、華やかな印象になんてなり得ない。そもそも菊はお葬式のお花。それはただの思い込みでした。この日私が見た菊の愛らしかったこと!

 

骨格診断はお洒落初心者の方だけではなく、アパレル業界の方にもすっかり定着しました。そのおかげもあって「参考にするくらいがちょうどいい」と考えている人もだいぶ増えたように感じますが、まだまだお洒落を制限するものという考え方をする方もちらほら。

より多くの方に診断ものをポジティブに取り入れてもらうためには、ルールを拾いながらも自分の着たいものを取り入れている人が街中に増えることが一番です。仏花と認識していた菊の本当の素晴らしさをブーケから感じたように、ルールにとらわれることなく、自由に、好きなものを、その人の感性で楽しんでいる姿を。診断ものの本当の使い方がもっともっと広がりますように。

デモンストレーションで作って頂いた、菊を使ったパリスタイルのブーケロン。これまでの菊のイメージを払拭するシックでナチュラルな雰囲気のものでした。人の価値観を一瞬で変えられるフローリストさんは芸術家だなと思います。11月は新宿御苑には野生の菊が見頃を迎えるそう。それはそれは見応えたっぷりだそう。皆様もぜひ。

 

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棚田トモコ

 神奈川県出身。愛称は〝ティナ〟

光文社CLASSY.やJJなどを中心にファッションや美容ページ企画などのライターとして活躍する傍ら、骨格診断アナリスト協会(ICBI)にて骨格診断のディプロマを取得。以降〝骨格診断アナリスト〟としても活動中。