皆さんは“なぜなぜ分析”をご存知でしょうか。これは問題やトラブルが発生した時に「なぜ?」を繰り返すことで、原因を徹底的に追求し、洗い出し、再発防止や改善策を見つける方法です。トヨタ自動車が発案した分析方法で、製造業界を中心に活用されているそう。近年ではIT業界や建設業界、医療や看護業界などの幅広い分野でも導入されているのだとか。トヨタ自動車の元副社長、大野耐一氏の『トヨタ生産方式―脱規模の経営を目指して』という著書の中に以下のような事例が書かれています。

 

  • 1、なぜ機械が止まったのか→オーバーロードがかかりヒューズが切れたから 

2、なぜオーバーロードがかかったのか→軸受の部の潤滑が十分でないから 

3、なぜ十分に潤滑しないのか→潤滑ポンプが十分にくみ上げていないから 

4、なぜ十分にくみ上げないのか→ポンプの軸が摩耗してガタガタになっているから 

5、なぜ摩耗したのか→ストレーナー(濾過器)が付いていないので切粉が入ったから 

 

このように起きてしまった問題に対して、“なぜ”を5回繰り返して根本を突き詰めて、「ストレーナーを取り付ける」という、問題を解決するための対策を導き出しています。ただし、問題によっては5回の“なぜ”を繰り返すだけでは原因に辿り着けずに6回以上のなぜを繰り返す必要もあることも。もちろんその逆も然りで、問題や状況に応じて“なぜ“の回数は変わります。

 

この思考はもちろんコーディネートを組む時にもひと役買います。多くの方は自分の骨格タイプを知ると、教科書通りのルールに則って洋服を選ぶでしょう。もちろんそれは一つの正解ですが、どの骨格タイプの方もさまざまな要素が混ざっているもの。首が短めだと言われている骨格ストレートの中でも首が長い方もいれば、バスト位置がやや低めの方もいらっしゃるし、首が長めと言われている骨格ウェーブタイプでも首が短い方がいたり、腰位置の低さがあまり気にならない方もいらっしゃいます。ナチュラルタイプは首の長さも腰位置の高さも個人差があるもの。骨格タイプに“ミックス”という答えがないからこそ、最後の最後は自分自身の体を細く分析することでより的確にスタイルアップできるというものです。例えば、全骨格タイプに似合うとされているIラインのスカート。多くの人は暗記した情報をコーディネートにそのまま反映しがちです。もちろん骨格診断のルールはある程度の指針にはなりますが、ひとえにIラインスカートといってもブランドごとに素材や幅や丈が異なるだけでなく、それがハイウエストなのかローウエストなのかによってもそのしっくりくる度合いは変わります。骨格診断を熱心に勉強されている方は似合う素材(生地)やシルエットについては自分にとっての最適なものをセレクトできるとして、身幅や丈、ウエストの高さまでこだわれる方はひと握り。それを実現させるためにはその方の身長や首の長さや腰位置なども含め、緻密な分析力が必要になっていきます。つまり、自分自身の体の特徴をしっかりと見極める力をつけないと「骨格タイプに合っているアイテムのはずなのになぜかしっくりこない」ということから抜け出せません。

 

例えばどの骨格タイプにも似合うIラインスカートをストレートタイプを例にしてしっくりこない理由を掘り下げてみます。

  1. 1、骨格タイプに合うはずのIラインスカートがしっくりこない→太って見える
  2. 2、なぜ太って見えるのか→生地の伸縮性が良くてムチムチ感がある
  3. 3、ムチムチ感が出るのはなぜか→肌と生地の間にゆとりがないから
  4. 4、肌と生地の間にゆとりがないのはなぜか→Iラインスカートだけれどいつものサイズよりも小さめの作りだから
  5. 5、小さめの作りのIラインスカートをしっくりこさせるには→いつもよりワンサイズ上げる

 

5回のなぜを繰り返すことで“いつもよりワンサイズ上のものを選べばスタイルアップする”という答えが導き出されました。こんなふうに、似合うとされているものがしっくりこなかった場合は、 “なぜ”を繰り返すとより自分にベストなものが導き出せます。ルールを知ることももちろん大切ですが、 “骨格タイプ”ではなくて、自分の特徴をより深く知ることはもっと重要です。私自身もルールだけに囚われ、自分の特徴を見失わないように。日々問いかけていこうと思います。

先日、ユニクロでケーブル編みのニットとカーディガンを購入しました。ルール的には骨格タイプストレートには似合わないものですが、個人的にトラッドを感じるこのデザインが大好きなので、どうしても着たくて。試着を繰り返して、ニットは1サイズ、カーディガンは2サイズあげるとわりかし着太りしないというところに行きつきました。似合わないものをどうにかする時にもなぜなぜ思考は役に立つと思いますよ。

 

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棚田トモコ

神奈川県出身。愛称は〝ティナ〟

光文社CLASSY.やJJなどを中心にファッションや美容ページ企画などのライターとして活躍する傍ら、骨格診断アナリスト協会(ICBI)にて骨格診断のディプロマを取得。以降〝骨格診断アナリスト〟としても活動中。