―禁止されると余計にやりたくなったり、制限されると逆に気になってしまうー

 “カリギュラ効果”を知っていますか。例えば、昔話の『鶴の恩返し』。人間に助けてもらった鶴が人間の娘に扮し恩返しをするのですが、「決して覗かないでください」と伝えたことが人の“見たい”という欲求を煽ることになり、結果的に覗かれてしまう…。

見るなと言われると見たくなる。やるなと言われるとやりたくなる。そんな経験、ありますよね。禁止されたことをやらずにはいられないことを“カリギュラ効果”と言います。学術的な用語ではなく、語源は映画の『カリギュラ』に由来するのだとか。この作品は1980年にアメリカで公開されたもので、主人公はローマ帝国の第3代皇帝。歴史上の人物の武勇伝かと思いきや、その内容は皇帝の異常な性欲と残忍性を描いたもので、映画の演出もエロティックでグロテスクなシーンが多く、アメリカの一部の地域では上映禁止になったほど。ところが、“上映禁止”になったことが人々の興味関心を煽り、大ヒットします。これがきっかけとなり、人間の好奇心を“禁止”することで欲求を掻き立てることを“カリギュラ効果”と言うようになったのです。

 

 このカリギュラ効果は骨格診断メソッドを実践する私たちにも起きていると感じています。皆さんもご存知の通り、骨格診断はルールがたくさんあります。骨格タイプ別の基本的な型をしっかりと守るとなると、そこにストレスを感じる人も。何を着ていいかわからなくて骨格診断メソッドに頼るという人以外は、骨格タイプ別に“着てはいけない”アイテムがある、つまりは禁止事項があると捉えられてしまいがちです。もちろんそんなことは決してありません。
例えば、骨格タイプストレートは柔らかな生地だと着太りすることが多いですが、捉え方としては堅い生地の方が簡単に着痩せして見えるし、より似合うというのが正解です。それにも関わらず、 “着たらいけない”というような解釈をする人が多いのが現状です。ルールを突き詰めたら、確実に各骨格タイプのネガティブとされている部分をカモフラージュできることはたしか。ただ、それがその人にとって本当にいいかどうかは別の話です。たとえば、骨格ストレートタイプであれば、直線的なもので設計されているもの、生地は硬いものが骨格タイプならではの豊かな肌のハリを引き締めて見せてくれる反面、真面目すぎるような着こなしになるし、ウェーブタイプであれば体に厚みを出すことがスタイルアップにつながることから、曲線や小さなあしらいのものを軸にしたデザインが中心のため、幼い印象になる可能性も。
骨や筋をカモフラージュすることでスタイルアップするナチュラルタイプはゆったりとしたサイズのものだとそれが叶いやすいためマニッシュさばかりが際立ってしまいがちです。もちろんそれはそれで着こなしの一つの在り方だし、それをやりたくてやっているならもちろん問題はないと思います。ただ、本当に着たいものを我慢しているのであればもったいない。似合わないとされているものも“好き”だから楽しみたい。けれど、スタイルダウンしてしまうから着ない。こんなふうに欲求を抑え続ければ、それはストレスになり、そういうものが似合う骨格タイプを羨ましく思うようになることになります。さらに言えば、自分の骨格タイプを否定すること、自分を否定することにつながることにもなりかねません。大切なのは好きなものを諦めないこと。そういう考え方ができた方がファッションを楽しめるはずです。

 

 とはいえ、時にはカリギュラ効果を取り入れてみると、スタイリング力がぐんと上がることも事実だと思います。骨格診断メソッドの基礎をしっかりと頭に入れた次は、似合わせ方のレパートリーを“好きなものを着たい”という欲求を利用してひたすら考えるのがおすすめ。いわば骨格診断メソッドの応用編。ルール通りの着こなしがそろそろ飽きちゃったな…なんて時がまさにその時期で、これまで押さえていた欲求を爆発させる段階です。一見面倒に見えるかもしれませんが、基礎がしっかりと身についてきた後半はこれまで教科書通りのアイテムだけしか使えなかったという、ある意味欲求を制限していたことになるためカリギュラ効果が発動されやすいです。そのためおしゃれ感度はかなり高め。気になるコーディネートがたくさん入ってくるはずです。着たいものを徒然なるままに纏うのもいいですが、何か変化を起こしたいなら、少しの制限をしてみるのも手です。考えることでコーディネート力が身につくのは間違いありません。こんなふうに骨格診断と上手に組み合わせて、着こなしを日に日にアップデートしたいものですね。自分らしいオシャレをすることで毎日がもっと輝くはずだから。

先日あるブランドさんの2025年の春夏の展示会に伺った時に撮影させてもらった一枚。コーデュロイを使ったブルゾンやサロペット、パンツ…暑い季節にあえて秋っぽいアイテムを取り入れる提案にハッとさせられました。これまでよりも暑い時期が多くなったりと環境が変化しています。今まで以上に概念にこだわらない着こなしを意識することは、いつものコーディネートを刷新してくれるはずです。

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棚田トモコ

神奈川県出身。愛称は〝ティナ〟

光文社CLASSY.やJJなどを中心にファッションや美容ページ企画などのライターとして活躍する傍ら、骨格診断アナリスト協会(ICBI)にて骨格診断のディプロマを取得。以降〝骨格診断アナリスト〟としても活動中。