歳を重ねると時間が経つのがあっという間で、ばっちりそれを実感していますが、私は1年のうちでとくに2月が瞬足で過ぎていきます。2024年も例年通り、 “サロン・デュ・ショコラ”に猛進した1ヶ月でした。
世界最大級のチョコレートのお祭りと言っても過言ではない“サロン・デュ・ショコラ”、通称“サロショ”は、1995年にパリではじまったもので、日本では伊勢丹新宿店で2002年にスタートし、今年で22回目。このイベントには毎年テーマがあるのですが、2024年は“Touch!”をテーマに掲げ、パート1からパート3までの3つの会期で開催されていました。パート1は食通が唸るほどの新しいカカオの世界を知れて、パート2では世界のトップシェフのショコラがずらり。ちなみにパリでも手に入りにくいショコラティエやパティシエのショコラやサブレが一同に会し、運と努力次第で(大人気のショコラは会場に入れたとしても、早い時間でなければ売り切れてしまっていて手に入りません)口にできるのですが、今年は世界的に活躍をする巨匠たちも来日したりで大盛況! 毎年のことではありますが会場に入るのでさえ抽選で、私も三度目の挑戦でなんとか入れました。そしてパート3では世界と日本でその名を轟かせるシェフたちのショコラが大集合。イートインも充実していて、さまざまなショコラ文化を楽しめました。カカオを使ったカレーとか、ハンバーガーとか、ビールもありましたよ! 何度も足を運ばないと食べきれないので、打ち合わせと打ち合わせの空き時間とかを利用して会期中何度も伺っていたので、お店の人たちとはそこそこ仲良くなるほど(笑)。ということで、とにかく今年も全力でサロショを楽しみ、気絶するくらいの美味しさに出会いました。でもここで得る素晴らしい体験は、ただ私がショコラやスイーツが好きと言うことだからではなく、“ショコラ”を通してこれまで開けられていなかった扉が開かれたりするという、人生に奥行きを出してくれるほどの影響があるのです。
サロショには、“M・O・F”(モフ)という、フランス文化の優れた継承者として高い技術をもつ人々のみに与えられる称号を持つショコラティエやパティシエのショコラが並びます。その方達の技術と感性が詰まった一粒はまさに芸術品で、口にすれば、新たな世界が広がります。どれも間違いなく美味しいのですが、その中でも特に度肝を抜かれる一粒に毎年出会えるから来年もまた行きたくなるのです。そこで出会う一粒は巨匠たちの努力の賜物。いや、彼らはそれを努力と思っていないかもしれません。しかも代表作とされるショコラとは別に、毎年新作が必ずあって、そこにもまた五感が揺さぶられる新しいエッセンスが入っていたり。新作の多くはヴァカンス先で出会った人や見たものからインスピレーションを受けていたり、お客さんとのコミュニケーションがきっかけになっていたりとさまざまのようですが、日々感性を磨いていらっしゃることでしかその作品が生まれないことがわかります。だから例え同じお題で発注を受けても巨匠それぞれの素晴らしいクリエイションが発揮され、味や素材が一人としてかぶることがないのだとか。
ファッションも同じだと思うのです。骨格タイプ別のコーディネート案も基本的なことを学んだら、それをどう自分らしく落とし込めるかが洗練されるか否かの鍵になります。例えば、骨格タイプ別のコーディネートを提案する時に代表とされるお決まりのアイテム同士を掛け合わせれば、そこそこのスタイリングは完成します。ショコラに例えてみるなら、決められた材料でレシピ通りに作れば、「普通に美味しい」と言うものが出来上がるわけです。もちろん、巨匠たちもそこからスタートしたのだと思います。けれど、鍛錬を重ね、感性を磨き続けた結果、彼らは基本のショコラでさえも人を感動させます。“普通”に見えるけれど、素材にこだわり、それを育てる土にこだわり。そして新たな味を生み出すために日々生活の中で感じたことを大切に受け止める。新しいものを見る。まだなかった“美味しい”を求めてトライアンドエラーを繰り返す……。その繰り返しと小さな挑戦と失敗の繰り返しでしか新しくて感動するもの、普通なのに普通じゃないものは生まれないでしょう。
自分に似合うファッションをより素敵に見せることも同じことだと思うのです。コーディネートは平面的ではなく、立体的で奥行きがあることがいいとされています。ストレートタイプであれば、それは質のいい素材が叶えてくれたり、重厚感のあるジュエリーがひと役買ってくれたり。ウェーブタイプであれば繊細なデザインのものを重ねていくことであったり。ナチュラルタイプも布を大胆に重ね合わせるようスタイリングすることでかなりスタイリッシュになるのは周知の事実。基本のコーディネートを覚えたら、自分らしい小さな挑戦をしてみるのはどうでしょう。毎日の少しのチャレンジが、THE骨格に似合う服をその人らしく、素敵に仕上げてくれるはずだから。そしてその積み重ねは、年齢を重ねた時の財産になると思うのです。
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棚田トモコ
神奈川県出身。愛称は〝ティナ〟
光文社CLASSY.やJJなどを中心にファッションや美容ページ企画などのライターとして活躍する傍ら、骨格診断アナリスト協会(ICBI)にて骨格診断のディプロマを取得。以降〝骨格診断アナリスト〟としても活動中。Facebook
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2017年1月18日初版発行