みなさん、コラムニストのジェーン・スーさんと、アナウンサーの堀井美香さんのポッドキャスト番組『OVER THE SUN』を聴いたことはありますか。私は毎週金曜日、夕方5時の配信を心待ちにしています。毎回のトークテーマはさまざまだけれど、女性の「わかるわ〜!」とか「そうそう、それね!」みたいなことをさらりと言ってくれる、いろんな意味で気持ちが良かったり、ときに心細くなる乙女たちに寄り添ってくれる、そんな番組です。あまりに面白いから繰り返し聴いているのですが、私が考える骨格診断の在り方とリンクする内容があったので、皆さんにもシェアさせてください。それは、第57回『謙虚な気持ちで、愛を持って』という回。かいつまんでお伝えすると、冒頭にお伝えした「なりたい自分を目指すのも正解だし、ありのままの自分を楽しむのもよし」というようなもの。骨格診断メソッドは、どちらを選択しても役に立ちますが、“なりたい自分になる”を選択する方にそれを上手に活用して頂くためには、骨格診断の考え方についてきちんと知って頂く必要がありそうです。
最近の時代の傾向として、ひとつの正解に寄せていくことがなくなってきたというのは、皆さんも感じていらっしゃるはず。それこそ、なりたい自分を目指すのも正解だし、ありのままの自分を楽しむのもいい。そういう選択をあたりまえのように、堂々とできるようになりました。どちらを選択するかの自由は、ずっと前からあるけれど、“ありのままの自分を楽しむ”ということを選んだ途端に手を抜いているように思われる気がしたり、はたまた自信満々に見えたりで、できなかった…なんていう人もいらっしゃるのでは? ちなみに私はその一人。ティーンの頃はとくに“向こう側のあの子”に憧れていました。根がミーハーな私は当時のitガールに精一杯に寄せていて、もちろんイケてるその子っぽくなることこそイケていることの証だと思っていたし、それが当時の私のアイデンティティーを形成していたから、自分に似合っているとかいないとかはその頃の私にとってはどうでもいいことで、母が口をすっぱくして言う「もっと違う、似合うものがあると思う」に反発していたものです。大人、とくに母親の言うことはあながち間違っていないというのは、自分がだいぶ大人になってからやっと気づくもの。ちなみに今だったら大ブーム中の骨格診断やパーソナルカラーに盲信していたに違いないと思います。憧れのあの子より、自分の良さを発揮してくれる診断ものをオシャレの軸にすることが当たり前になっている今の時代。若者たちをちょっとだけ羨ましく思ってしまったりします。
さて、ここからが本題です。タイトルにもあるように“ありのままの自分”=“所属”を楽しむ派と“なりたい自分”=“憧れ”を目指す派のどちらもが同じくらいいる令和。前者にとっては“自分のいいところ”が見つかる“診断もの”はとても役に立ちますが、後者にとっては“なりたい自分”を目指している道すがらの邪魔になる可能性があると捉えられがちです。すでに自分の似合うオシャレを熟知している人、なりたいイメージがある方にとっては、骨格診断のある情報だけがひとり歩きして、「骨格●●タイプだから、コレでなくてはならない」というように伝わりがちです。
私は、骨格診断メソッドというのは、骨格タイプを知ることも大切だけれど、それはあくまでも自分の体の特徴を知るきっかけであってほしいと思っています。自分の体の長所をどうしたら活かせるかということを考え、実践することのほうが正確な骨格タイプを知ることよりも大切だと思っています。もちろんひとつの答えを出すことは洋服選びの指針になるので大切ですが、例えば、ナチュラルタイプでもストレートタイプの要素がある方、ウェーブタイプの要素がある方がいらっしゃいますよね。その場合、ナチュラルタイプだけの着こなし方だけではなく、そのほかの骨格タイプが似合うとされているものも着こなせる可能性があるから、ナチュラルタイプに似合うコーディネートを軸にして、その方のストレートタイプ的な体の特徴、ウェーブタイプ的な体の特徴を拾ったコーディネートを提案することも大切ですよね。ナチュラルタイプ一辺倒のコーディネートだけでなく、その方にしっかりと寄り添ったコーディネートを提案することでその方の良さがぐんと引き出されるはずです。
もっと言えば、その方がなりたいイメージ像も“似合う”も両立してあげること。それをプロが導いてあげるだけでなく、お客様ご自身でもそれができるようになって、お洒落をより楽しめるようになるのが骨格診断を活用するメリットだと思います。
大前提として、骨格診断を取り入れる方にはどの骨格タイプも「これを着てはいけない」という禁止事項はないということをご理解頂きたいなと思いますが、あくまで「これを着るときはこういう工夫をするとよりいい」「こういうスタイリングもお似合い」というように、これまで着てこなかったようなコーディネートに挑戦するきっかけになり、その方のオシャレの幅がより広がるようにメソッドを活用して欲しいもの。良くも悪くも、メディアなどで手軽に自己診断ができるようになり、基本的なルールをわかりやすくお伝えするためにそうなってしまったのであろう、ガチガチのルールで構成された製作物が広がりがちです。“骨格診断”という言葉がたくさんの方に認知され、一部の情報に尾ひれがつけられた結果、本来オシャレを楽しんでもらうためのものが逆にオシャレの幅を狭めてしまうものになっている場合があるというのは、とても残念なこと。 “所属”=“ありのままの自分を楽しむ派”は、骨格タイプを知り、それを軸に自分の所属しているところを存分に楽しんだらいいと思います。そして、“憧れ”=“なりたい自分”を目指す人は、所属を越えて理想の自分を叶えるために努力をしたらいい。どちらにしても自由自在に“所属”と“憧れ”を行き来できる軸として骨格診断メソッドを活用してもらいたいとこのポッドキャスト番組を聞いて思ったのでした。骨格診断アナリストがその架け橋になるには、メソッドをわかりやすく伝えること、そして提案の幅をたくさん用意することですかね。基本アイテムはもちろん、移りゆくトレンドをしっかりと勉強し続けなくては思う夏のはじまりでした。
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棚田トモコ
神奈川県出身。愛称は〝ティナ〟
光文社CLASSY.やJJなどを中心にファッションや美容ページ企画などのライターとして活躍する傍ら、骨格診断アナリスト協会(ICBI)にて骨格診断のディプロマを取得。以降〝骨格診断アナリスト〟としても活動中。
二神弓子/丸田久美子/
森本のり子/寺尾智子
2017年1月18日初版発行