私は“とらや”が好きです。和菓子に精通しているわけではないし、自分自身が頻繁にとらやの商品を食べているわけではないので、味を語るのはおこがましいのですが…美味しいと思います。でも私は味よりもとにかくあの門構えとか、名店がひしめくデパ地下の中でもひと際荘厳な出で立ちで、近くを通ると背筋がすっと伸びる存在であるというところに魅了されています。カクカクした箱やそれらが渋い色のパントーンみたいに並んでいるところなんかお洒落だと思います。
ということで、お中元やお歳暮、きちんと感が大切なはじめましての日、お詫びをしなくてはいけないとき…。要所要所でいろんな想いをとらやの商品に詰め込みがちです。ちなみに、本家とはまた違う、柔らかい雰囲気の中でちょっと遊びの効いたあんこスイーツが楽しめるトラヤカフェも好き。本家よりもカジュアルではあるけれど、やっぱり品を感じます。とにかく、500年もの長きにわたって、和菓子界のトップに君臨し続け、品格を保ちながらも時代の流れに華麗に乗りながら、新しい提案をし続けられている…そんなところが大好きです。

 2020年はとらやのパリ店が開店40周年だそう。それを記念し、世界の洋菓子界を牽引する“ピエール・エルメ・パリ”とコラボレーションをした限定商品を発売しています。もちろん買いにいきました。だって、ときめくパッケージなんですもの。とらやのカクカクした箱はそのままに、鮮やかなフューシャピンクの外箱、蓋をあけると、白地にポップなピンクとレッド、オレンジの水玉をあしらったフレンチポップなルックが目に飛び込んできます。コラボレーションした羊羹“イスパハン”は、フランボワーズがふんわり香って、食べ進めるうちにライチの風味が口いっぱいに広がります。最後にはふんわりローズの香り。これは間違いなく羊羹だけれど、それには求めたことがないというか、誰も思いつかなかった華やかさがあるのです。一瞬で虜になりました。“老舗”という二文字で片付けるには歴史がありすぎるとらや。そんなブランドがこんな遊び心たっぷりのものを発表するなんて!! 意外性という遊び心の中にたしかな味、そしてやっぱり漂うきちんと感。感動がいっぱいでした。

 なにかと骨格診断の話しに絡めてしまう私は、このとらやの斬新でセンスばつぐんの羊羹を見て、例にもれず思いました。とらやは、骨格タイプに置き換えると“ストレートタイプ”で、シックできちんと感のあるものが似合うけど、パリで可愛らしさをまとったのだなと。そしてストレート体型の生まれ持った“ちゃんとした感”に遊び心が加わったことで、新しい魅力を開花させたのだと。もっと具体的に言えば、ウェーブタイプの“柔らかさ”をストレートタイプがまとったように感じたわけです。たとえば、気の強い女性がうっかり見せてしまった弱さ、それがきっかけで恋愛がはじまったり、普段はパンツばかりはいている人がスカートをはいた姿にキュンとしたり。いつもとは違うことや相反することを楽しんでみることというのは、その人の新たな魅力を生み出すきっかけになると思います。

 骨格診断は、そのアイテムが似合う理由が明確にわかるし、逆になぜ似合わないかもばっちりわかるというすごく便利なメソッドですが、ときにルールがあまりにもたくさんあって(細かくルールがあるからこそ、より似合うものがわかるのですが)、「これを着てはいけない」なんて思いがち。私も骨格診断メソッドに出会ったときはルールにばかり気を取られて、ファッションを楽しむということを忘れていた時期がありました。
でも、本来お洒落って、そういうことじゃない気がするんです。みんな着たいものを着たほうがいい。でも、着たいものがすごく似合っていたり、スタイルがぐんと良く見えたらもっと嬉しいじゃないですか! 先日の第11回目のコラムにも書かせてもらったように、自分の骨格タイプには似合わないとされているものをいかに着こなすかを考えてみることで、コーディネート力がつくと思うんです。
とらやだって、戦後まもない頃は原材料不足で、和菓子の製造を続けることが困難で、お汁粉やお雑煮に加えて、コーヒーやアイスクリームなどを提供していたのだとか。自分の持っている良さをベースに、ちょっとルールから違うことに挑戦してみる。それって、すごく素敵なことだし、工夫をしてみることで新たなアイディアが生まれるもの。そうすることで人とかぶらない、その人らしさが生まれるとも思います。上質なレザーなのに象やうさぎなどのアニマルを模したロエベのバッグやチャームを見た時、アップルウォッチとエルメスのコラボを見たとき。そして今回のとらやのイスパハンを見た時の衝撃。予想外の化学反応が新しい何かを生むのだと改めて思います。だから! ときにはルール外のことだってやってみたらいいと思う。きっと素敵な何かが隠れていると思うから。

発売後さっそく買いに行ったとらやの“イスパハン”。あまりに可愛いパッケージだから、捨てられない(笑)。白地にあしらわれたドットの色使いは、お洋服の色合わせの参考にもなりますよね。

 

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棚田朋子

神奈川県出身。愛称は〝ティナ〟

光文社CLASSY.やJJなどを中心にファッションや美容ページ企画などのライターとして活躍する傍ら、骨格診断アナリスト協会(ICBI)にて骨格診断のディプロマを取得。以降〝骨格診断アナリスト〟としても活動中。